ベルセルク

この作品には、凄まじい衝撃を受けた。

その世界観、日本語、そして画力、どれを取っても超一流であり、

特に画力については世界一だと私は感じている。

一枚一枚のコマが、まるで写実的な壁画のようでありながら、

漫画としての美しい流れを持っている。漫画としての最高の技術がここにある。

どうすればこんな光景が頭に浮かび、漫画として表現できるのか。想像もつかない。

また、西洋の世界観を元にしながら、作品中のセリフはほとんどが日本語である。

現代日本では見かけないような言葉もそこかしこで効果的に使われており、

作者の国語力に驚嘆する。

その言葉は、比類なき画力と相乗して圧倒的な力を持つ。

日本人の喜びの一つは、漫画を母国語話者として読めることだと

思ってはいたが、この作品でその極みを感じることができた。

この第一巻は物語の序章で、絵はまだ拙い。正直凡作感もある。

しかしながら巻が進むにつれ、画力は向上していく。これが感動を後押しする。

漫画内の偉そうなセリフを書くだけの努力を、作者も漫画に対してしていると感じるからだ。

 

 

中世ヨーロッパ風の疲弊した世界、暗躍する魔物たち、身の丈ほどもある大剣を振るいそれに一人立ち向かう「ベルセルク」…漫画やゲームでも見られるファンタジーらしい世界観ですが、作者の緻密な書き込みのお陰で全く嘘臭さがありません。

暴力や性、愛憎、欲望、恐怖や絶望といった「人間」らしさも一切の妥協なく描かれており、特に主人公ガッツの不屈の精神力、彼を支える負の感情には読んでいるこちらが圧倒されてしまいます

漫画は子供の娯楽、と言われていたのは昔の話とは言え、まだまだ「幼稚」だと捉える方もいるかもしれません。

漫画好きはもちろんのこと、私はそういった方にこそぜひ読んでいただきたいと思っています。

言葉の魅力、絵の魅力、ストーリーの魅力、キャラクターの魅力など、漫画でしか表現できない魅力が「ベルセルク」には極限まで詰まっています。

完結するかどうかが気掛かりではありますが…「ベルセルク」は間違いなく日本の漫画を代表する不世出の作品です

 

唯一無二、似て非なるものすら存在せず、追随を全く許さない筆致で

孤高の原野を歩み続ける長編大河ファンタジー。

恐らく1ページあたりの線描本数は日本一=世界一ではないでしょうか?

この方面での『描画力』において最高の高みに達しています。

(あくまで最新刊での話しですが)

完全なファンタジックワールドを描いているのに、匂い(決してよい香ではない)

が漂いそうなこの絵は一体何なのでしょう…。

線の数に比例するようにストーリーも濃い。

「他人の業」の深淵をムリヤリ覗き込むような恐怖を底流に、

業を背負いながらも守るべき仲間に僅かな光を見出し、

また壊れ、それでも闇を切り裂き進む黒い剣士の姿。

業深き主人公「ガッツ」をして「足掻(あが)くもの」と名付けた設定が、

この作品のありえない空想世界を、不思議とリアルに感じさせる。

日々をそれなりに「足掻いている」読者である我々は、ベルセルクを読み進める度に

有り得ないほど苛烈な作品世界の地獄を彷徨う、この隻腕・隻眼の超人剣士「ガッツ」に、

日常とは対極に居る彼に、知らず知らずにシンパシーを憶える。

もしそのシンパシーが無ければ、この窒息しそうなほど濃密な、

ベルセルクの架空世界に留まることはとても難しい。

作者は、きっとその事を強く思念しているのでしょう。

白泉社というメジャーではない(失礼)出版社だからと敬遠するのは大きな損失。

ベルセルク」は(完結のいかんによるが)恐らく、日本のマンガ史上ベスト10に

入る作品になる可能性が多いにある。

あなたがもし「自称:マンガ好き」なら、読後の好き嫌いは別として

一度は読んでおくべき作品。

ハッキリ言って、好みはすごく分かれると思うが、これがマンガの可能性の

一つの究極形だと思う。

 

 

ファンタジーの要素をふんだんに取り込んだ非常に練りこまれた世界観と、数々の魅力的な設定から紡ぎ出される物語の重厚さ、バトルアクションシーンにおける凄まじいまでの迫力、凄惨なスプラッタシーンや極めて淫靡なシーンをも一切妥協せずに描き切る描写へのこだわり等、コミックとして魅せる事を徹底的に意識した極めて高レベルな作画、性格付けが非常にしっかりなされた上、各々の価値観や内面世界にまで踏み込んだ表現が随所に見られる実に魅力的なキャラクター群、そして長期連載にも関わらず、まったくダレる事無く綴られ続けているストーリー構成力等、とにかく大河ファンタジーコミックの金字塔と呼ぶに相応しい質を持った傑作です。

今巻に収録されているのは『ヤングアニマル』の前身誌『アニマルハウス』に単発で掲載された2話分と、同誌にて定期連載が開始された第1話です。

初出から実に17年が経過しており、流石に現在の絵柄とは違っていますが、作画の方向性が全くブレていないのは大いに評価できる点ですね。冒頭いきなり〇〇〇シーンから始まったり、数々のスプラッタシーンを見せ付けてくれる等、最初から極めて購読者層を限定したシーンが頻出しています。この潔さこそ、ツボに嵌った者には堪えられない魅力となっていますね。

またこの巻からしばらくの流れは、本来第14巻から始まる「断罪編」にて語られる内容です。この段階で著者・三浦建太郎氏の中ではそこまでの展開が完全に完了している訳で、この構成力の高さは見事と言う他無いですね。数々のキーワードが徐々に紐解かれていく過程は快感ですらありました。

 

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