闇金ウシジマくん
1巻のインパクトが凄まじかったため、2~4巻は正直「アレっ」という感じ。
勿論「凄味」はあるのですが、1巻で震え上がった「追いこまれる債務者の恐怖」があまり
感じられない。。でも、5巻以降読み進めるとまた戻ってきました、1巻の感覚が。
ギャル汚くん、フーゾク・ヒモくん、親寄生フリーターくん・・・と、追いこまれくんたちの
人物設定・描写がとにかく絶妙。自分の周囲にいないタイプではあっても「いそうだねー、
こういう人」というリアル感・親近感。このいかにもいそうな人がそれこそハンパでない
深みにはまるから恐怖感が倍加する。
あまりの陰惨さに読んで不快感を感じる方もおられるかもしれません。ただ自分の場合は、
そういう不快感・嫌悪感と同時に、いい加減・無計画な債務者が追い込まれ、破滅させられ
ることに(ちょっとうまい表現が見当たらないのですが)ある種の「快感」すら覚えてしま
ったことに気づいて、自分で自分に慄然としました。人の弱みにつけこむこんな商売が
許されていい筈はない、という理性と、恐らく人間なら誰でも持っているサディスティック
な側面と真正面から向き合わされる・・・そんな感覚でした。
読む人の立場や信条によってとらえ方は様々でしょうが、文字通りの問題作。必読。
社会の底辺を生きる、一貫性やビジョンのない
堕落した生活の中で見栄、欲望、寂しさから
借金を重ねていく人々を
かばうこともこきおろすこともなく
あたかも実際そこにそんな人が存在するかのように
淡々と描いています。
しかし、そこに描かれている人々の心情、葛藤、悩みは
実際そんな世界を知らない我々にも説得力を持って迫ってきます。
ストーリもしっかりしていて
引きずりこまれるようにして読んでしまいます。
総合的なレベルの高さには目を見張るものがあり
「これは文学である」といっても差し支えないと思われます。
ただ、描写がグロいので、間口は広くはないです。
受け付けない人も多いかもしれません。
パチンコ中毒の主婦や、派手な買い物をするOLの破滅ぶりを
本当に容赦なく描くので
(ことにあの元OLが工藤静香の歌を歌うシーン、最低でしたぜ)
読んで数日、気分がヘコみました。
あんまりヘコんだんで、大学に持って行って後輩たちもヘコませてやりました。
これほど嫌な気分にさせられたマンガは他にありません。
自信をもってオススメ。
決してヤミ金に手を出してはいけないとわかります。
なにげなく行き来している、都会の道のすぐわきで恐ろしい闇が息づいている・・そんな印象です。
序盤は、闇金を切り回している、23歳(にはとても見えないが)のこわもて・ウシジマが、様々な仕事に就いている債権者を追い込んでいく話ですが、この漫画が怖いのは「実際にいそう・ありそう」な転落人生が克明に描かれている点です。転落する恐怖を疑似体験できる漫画です。まとめて読んだ後、世界から色彩が失われたような虚脱感に襲われました。ギャグ表現でぼかしたぬるい暴力や笑いは皆無です。
「物語の価値」が、「感情を動かすこと」、「その世界に没頭させること」、であるならば、この作品はそういう意味で一級品です。
序盤は、典型的なダメな人間が債権者としてスピーディーに転落していく人生が多いのですが、ギャル男編や風俗編移行は、頑張っているけどちょっと弱いだけの人が、都会に蠢くおぞましい連中や恐ろしい連中に、絡め取られ、搾取され、どうやってもはまりこんだ蟻地獄から抜け出せないさまが描かれています。さらに搾取したり犯罪で儲けている連中も、なにかに搾取され脅され不安と貧窮の中で、常に一歩間違うと地獄に堕ちる危険と隣り合わせであり「幸せな人がほとんどいない」状態です。それが複雑な人間模様を浮き彫りにしており、都会というもののきらびやかで華やかなイメージや幻想をぶちこわし「リアルな都会の暗部」を垣間見せてくれます。
ただ、あまりにもリアルにえぐいので、感受性の高い人だと落ち込んだりブルーになる危険があります。この作品は一級品ですが「読んで楽しい元気をくれるエンターテイメント」では全くありません。元気がない時や自信を無くしている時には、購入するのはやめた方が良いでしょう。他人や社会への信頼や安心感が減退して不安になります。「どぎついものでも見たい」時に読むのをお薦めします。
これを読むば、ある程度想像力や共感力のある人ならば「がんばって真面目に生きたからってどうなるの?」という、若い時期にありがちな疑問が吹き飛びます。適当に生きていくこと・後先考えずに借金をし、将来を考えないで生きることの恐ろしさ、そう言った生き方をしていった先になにが待つか、その代償がどのようなものかを教えてくれます。
闇金と消費者金融の違いを知らない人とか、いざとなれば借金でもすればいいや、となんとなく思ってる人は読むと非常にためになるかも知れません。